会長ご挨拶


さる5月18日(土)に開催された総会におきまして、ご指名をいただき、はからずも会長の重職を拝命することになりました。実績と実力をもった、対外的にも存在感の大きかった錚々たる歴代会長のあとを受け、私のような未熟な者に会長の重責を担うことができるのか、忸怩たる思いでおります。


千葉県日独協会はその創設にあたって、ドイツ人俘虜収容所の歴史と大きくかかわっています。俘虜収容所と申しますと鳴門にあった板東俘虜収容所が有名ですが、千葉県習志野市にも、第一世界大戦中、中国で捕虜となったドイツ人兵士を収容した俘虜収容所がありました。当時蔓延したスペイン風邪がもとで収容中に命を失ったドイツ人兵士を弔う慰霊碑が習志野霊園にあります。千葉県日独協会は、毎年11月のドイツ「国民哀悼の日」に、ドイツ人兵士の慰霊祭開催を目的の一つとして1996年に設立されたという経緯をもっています。慰霊祭もまもなく30回目を迎えます。会員のみならず、駐日ドイツ大使、大使館付武官をはじめ、県、市、陸上自衛隊習志野駐屯地の代表、地元自治会など、各方面から多く方々がご参列くださっています。


第一次世界大戦の勃発とともに、それまで平穏に過ごしてきた一市民が、徴兵され、日本軍の捕虜となり、日本各地の俘虜収容所に収容されました。はるか故国に思いを馳せながら、遠い異国の地で無念の最後を遂げた兵士たちを弔う慰霊碑の管理が、地元住民の無償のボランティアにより維持され、毎年ドイツ「国民哀悼の日」にあわせて慰霊祭が実施されてきました。ドイツから来られたドイツ軍幹部のお一人は、この事実を知って大きな感銘を受けたとおっしゃっていました。われわれの活動は、高校の教科書のなかにも取り上げられております。清水書院から刊行されている高校の歴史の教科書に、慰霊祭の写真とともに、慰霊祭の話が掲載されています。また昨年は、東京の高等学校の先生が、生徒さんたちを引率されて、慰霊祭にご参加くださいました。われわれの活動に教育的意義も認めてくださりうれしく思っております。


俘虜となったドイツ兵の残した日記や当時の記録などを読みますと、捕虜に対しても給与が支払われており、収容所内でビールも購入できたそうです。また市民との交流もあり、その道のマイスターである俘虜から製法の伝授を受け、日本のソーセージ作りの草分けになった人もいるようです。そうした昔の資料の発掘、紹介なども、宗宮好和名誉会長を中心に会員有志の研究会で行ってまいりました。その成果は当協会のホームページに掲載され、関係者からも高い評価をいただいております。今後も、こうした活動に引き続き取り組んで参りたいと存じます。


また、当協会の特色として、金谷誠一郎前会長(現名誉会長)が在任中、とくに力を注いできました青壮年部の活動があります。青壮年部では、活力をもった前途洋々たる若手が、人生経験豊富で、多彩な知見をもっておられる年長の会員のアドバイスをいただきながら、将来を見据えたさまざまな興味深い企画とその実施に意欲的に取り組んでおります。


もちろん活動はそれだけではありません。恒例のビール祭り、習志野市、市川市のドイツフェアのイベントへの参加、クリスマス&忘年会、新春講演会&懇親会など、会員の皆様のチームワークのもとに、毎回和気藹々と。楽しく実施されております。またデュッセルドルフの独日協会との交流など、国境を超えた活動も行ってまいりました。

ドイツ語講習会、文化講演会などは、オンラインにより実施することで、会員だけでなく、ご関心をお持ちの方々がどなたでも、全国どこからでもご参加できるようなプログラムも組んでおります。


私のモットーとして、ドイツに興味をもたれ、千葉県日独協会の活動にご関心をお寄せくださる方々が、年齢、職歴、その他バックグラウンドを問わず、どなたでも気軽に参加でき、会員の皆様すべてが、千葉県日独協会の会員になってよかったと思っていただける会にしたい。そんな千葉県日独協会となることを目指して、これからも取り組んで参る所存です。


千葉県日独協会の活動につきましての詳細は、当ホームページと、このホームページに搭載されております協会通信『Die Eiche』をご覧いただけますと幸いです。


当協会の活動にご賛同をいただける方々のご入会を心よりお待ちしております。


2024年 6月吉日 会長 木戸 裕